それは、気付けばすぐそこにあった。

 

ようやく暖かくなったと思えばまた急に寒くなったり、どうも気候が安定しませんが、暦の上ではすでに春。

わたしの実家は京都の田舎にあるのですが(といっても十年ほど前に町中から引っ越した家なので、正直故郷という感覚はありません)、春になると近所の人が大量に採ってきた野草や山菜を分けてくれたのを思い出します。

わらびやぜんまい、こごみ、こしあぶらなんてパッと見ただの雑草で、わたし自身教えてもらって初めてその存在を知ったのですが、これが天ぷらにするとなんとも美味しい。

野草や山菜は苦味が強いものが多いですが、油で揚げるとその苦味が多少薄れるので、初心者はまず天ぷらで食べるのがいいでしょう。ふきのとうやたらの芽、こごみ、さっきもいったこしあぶらなどが特におすすめです。

菜の花やぜんまいはさっと茹でて和え物や冷やしてからサラダに。うどは厚く皮をむいてから酢水に漬けての灰汁抜きが必要ですが、生でも食べられます。

わらびは煮物も美味。ただ、まず灰を入れた水で下茹でし、灰汁抜きをしなければいけません。手間はかかりますが、それだけの価値は十分にあるでしょう。なんといっても季節ものですから。

なにもないけれど、確かにあるものもある。

 

町中で生まれ、町中で育った身としては突然の田舎への引っ越しには当初かなり抵抗がありました。実際電車も通っていない、スーパーまで歩いて二時間という環境に一年間でギブアップし、わたしは単身生まれ育った町に戻りました。

けれど、それまで雑草と見分けがつかなかった野草や山菜の美味しさ、そして農薬や化学肥料を使わずに育てられた野菜本来の美味しさはずっと町にいたままでは知ることはできなかったことでしょう。

たった一年の田舎暮らしでしたが、今から思えば得たものは決して少なくはありませんでした。